米田透の俳句 特別作品集 1995-2000年




白灯対談・白灯拾遺に取り上げられた句


響焔1995年12月号(No.330)
真っ青な秋空を背にシャトー立つ
掃除夫が落ち葉を掃きてパリの朝

響焔1996年1月号(No.331)
パリの秋日本語の本少し買う
加賀の鰤パンでは食えぬ飯を炊く

響焔1996年2月号(No.332)

冬の野に影絵広がる日の出前
木枯やフランス国旗日章旗


響焔1996年3月号(No.333)
フランスに戻る前夜に障子貼る

響焔1996年4月号(No.334)

春のパリ傘がおちょこになりにけり

響焔1996年5月号(No.335)
若者に日本語教う木の芽時

響焔1996年6月号(No.336)
焦げ付かぬフライパン買い四月くる
虚子の忌や我は人間探求派
水仙がこちらを向いてボンジュール

響焔1996年7月号(No.337)

カフェで聞く知人の帰国春暮るる
五月祭キスしサインしシラク行く
栃の花凱旋門が見え隠れ
四人乗り青葉若葉のパリを行く

響焔1996年8月号(No.338)

野茨や息子の目指す画家の道
鳥の群低く飛ぶなり麦の秋


響焔1996年9月号(No.339)
パリ祭の警官ランチ買って行く
盂蘭盆会終って渡るセーヌ川
自転車隊駆け抜けてゆきパリ真夏

響焔1998年1月号(No.355)

十月一日朝礼の後クロワッサン

響焔1998年5月号(No.359)

愛想の良いピザの店春めきぬ

響焔1998年6月号(No.360)
連翹の他は真冬に戻りけり

響焔1998年7月号(No.361)

マルシェのパンかじって帰りチューリップ

響焔1998年11月号(No.365)

バーベキュー百人分焼き夏の夕

響焔1999年2月号(No.368)

冬麗エレベータから犬が出て

響焔1999年4月号(No.370)

単身の赴任いつまで霜の鶴
フランス人椅子の向き変え雪景色

響焔1999年5月号(No.371)

ボンソワと女の車掌春隣

響焔1999年6月号(No.372)

北半球春来て妻の誕生日

響焔1999年8月号(No.374)
子の個展原色多く夏初め

響焔1999年11月号(No.377)
ベートーベン寝床で聴いて暑い夜

響焔2000年1月号(No.379)

秋暑しハイテクノロジー料金所
モンテナポレオーネ通りそぞろ寒
秋の川チーズのために赤ワイン

響焔2000年2月号(No.380)
散る落葉ニューカレドニアの話聞き

響焔2000年3月号(No.381)

方向を少しずつ決め冬木立

響焔2000年4月号(No.382)

濃紺の自分の時間日脚伸ぶ

響焔2000年6月号(No.384)

見晴らしの良い席をとり二月尽

響焔2000年7月号(No.385)
万愚節真空パックの焼き魚

響焔2000年8月号(No.386)

雷雨来るジャンヌダルクの前夜祭

響焔2000年9月号(No.387)

ジアン焼のミルク入れ買い夏の川

響焔2000年10月号(No.388)

たらこで御飯横浜の熱帯夜

響焔2000年11月号(No.389)

助手席にフランス青年今日の秋

響焔2000年12月号(No.390)
フランスの紺の秋茄子味噌炒め


1996年の作品:

白灯集巻頭作家・特別作品

 シャトー夏期講座    米田透

森と池とシャトー舞台の夏期講座
仏道について夏の各地から
汗かいて百八礼拝膝笑う
朝のパンの蜜に蜜蜂ひかり来る
夏の野原朝の牛乳搾り立て
手作りのジャムに人気の夏館
村人と音楽の宴虹が出る
扇風機止め忘るるは紐を引く
日の暈や人それぞれにサングラス
緑陰やバレーボールに婦人つどい


 夏休み 米田透(フランス) ---> 響焔賞応募、落選

ズッキーニ肉と煮込んで夏休み
フランスを少し応援夏五輪
投げ槍が震えて伸びる夏の空
夏の日やステンドグラス黙示録
原爆忌コップで二杯水を飲む
夕立や日本猿たち岩の陰
夏の空大河に架かる運河橋
炎昼の運河橋行く観光船
向日葵や妻丸顔で趣味俳句
約百個干草の束転がされ
ブルゴーニュ女体の起伏夏の雲
夏の丘乳首の位置に塔が立つ
鐘の音や夏のメニューのコース食う
地のワイン土産に夏野駆け戻る
原発の白煙昇り夏の果


1997年の作品

 オルレアン四年目の春 米田 透

寒明ける仏意のままに生かされて
オルレアン四年目の春成果出る
これまでの書類を整理春の月
北半球春となり妻誕生日
妻に出すカードを選びクロッカス
子の卒業画家以外への道はなく
囀りやホテル住まいに慣れてきて
春野菜肉と合わせて何作ろう
花粉症フランスに来て出なくなる
菫咲く次は何咲くオルレアン

 蝉時雨 米田透(フランス)  ---> 響焔賞応募、落選

夏のシャトー仏道講座開かれて
朝涼し搾乳小屋の乳を買い
村人とシャンソン合唱夕焼けて
手を引かれ野外ダンスの渦の中
日常に戻って出勤炎暑かな
昼食は呼び掛け合って緑陰へ
木の卓に追えども戻る蜂一匹
草むしり大変だったと母の文
蝉時雨バカンス先は母国なり
盆休み鯛の塩焼き烏賊刺し身
熱帯夜足許に猫眠りおり
子の宿題かぼちゃの煮物出来上がり
新盆や父の写真を子と飾り
妻と子がたくましくなり青葉山
雲の峰見下ろし向かうパリ空港


1998年の作品

白灯集巻頭作家・特別作品

 初夏の青空 米田 透

十日間妻と過ごして紅つつじ
現住所フランスと書き春の雲
菜の花畑無言の列車突き進み
黄金週間妻の退院確かめて
フランス語遅々たる歩み夏始
デザートにウオッカ入り氷菓選びけり
甚平を着てパソコンのキー叩く
昼食のテーブルを這う細き虫
英国の初夏の青空護摩焚かれ
夏の寺正座瞑想二時間半

 鰯雲 米田透(フランス)  ---> 響焔賞応募、落選

あめつちの恵み干草ロールでき
村のホテル洋梨元気に育ちおり
シャトーの庭芝刈の跡踏んで行き
炎天にトラクター駆るパリジェンヌ
弁当に村のトマトが一つずつ
鰯雲週末日本に帰ります
地球半周横浜の蝉時雨
子にパソコン買って残暑の秋葉原
復調の妻とドライブさるすべり
家族住む暑い日本を発ちにけり
チーズ塩からくなっており休暇明
枝付きのトマト自炊を再開し
玉葱の甘みの効いたカレーでき
秋初めやる気が出たと子のメール
立ち上がる新規ビジネス秋気澄み


1999年の作品

 妻が来て 米田 透

マロニエの花のバカンス妻が来て
昇る陽がプールに揺らぎクロワッサン
石畳妻と歩いて降臨祭
影涼しみんなで試すエスカルゴ
パリ夏の婦人警官りりしくて
涼しさや「モネの水蓮」楕円の間
鴨泳ぐ川辺のディナー夏の月
ショパン弾く妻フランスの夏の宵


皆既日食 米田透(フランス)  ---> 響焔賞応募、予選通過
                       
胴体はズッキーニなり盆の馬
ベトナムの料理で祝い巴里祭
にこやかなアコーディオンひき夏のパリ
七月のロワール吾もバカンスへ
大平野機械が麦を刈っており
ドイツ語であいさつ交わし夏期講座
向日葵の畑を回り村の宿
大鍋のミルク沸騰夏の朝
百人でたきぎを拾い夏のシャトー
じゃんけんのルールを聞かれ雲の峰
オーストリアの剣道二段西瓜割る
夏つばめインターネットに子のページ
殻捨てて壁よじ登りエスカルゴ
パリ十一区スペイン風の焼き鰯
欧州に皆既日食ぶどう熟れ


2000年の作品

響焔2000年3月号(No.381)

白灯集巻頭作家・特別作品

マロングラッセ  米田 透

テーブルにイタリアリラ貨夜長かな
厚く切るフルーツケーキ秋深む
栗の実のマロングラッセとなる不思議
紅葉が進み行く街消防車
ロワールの林檎のタルト「小」を買い
目の青い子供が遊びもみじ道
街角に黄色いポスト冬来る
石畳に大きな落葉パリの鐘
雪催いオルレアン日本映画祭
具沢山の味噌汁作り霜の夜



響焔四〇〇号前年祭
フランス・オルレアンの旅
               (文) 米田 透
              
 平成十ニ年五月二十日の夕刻、案内役の
筆者(オルレアン在住)は響焔の山崎主宰、
駒志津子さん、栗原節子さん、半沢つや子
さん、高際君子さん、伊関葉子さん、関花子
さんの計七名の皆さんをパリ・シャルルド
ゴール空港でお迎えした。まずパリに二泊
して主要な観光地を訪問し、その後オルレ
アンに移動して五泊、ロワールの城廻りや
ジアン等へも足を伸ばしかつ句会も開く、と
いう日程の旅が始まった。以下日記風に
報告する。

 〔一日目・パリ入り〕午後七時頃ノートルダ
ム大聖堂を見ながら、ホテル・ロワイヤル・
サンミッシェルにチェックイン。

 〔二日目・パリ観光〕オルセー美術館とオー
ランジュリー美術館に行ったが、いずれも閉
館だったので、チュルリー公園を歩いてルー
ヴル美術館に行った。旅行中傘が必要だっ
たのはこの時だけだった。ルーヴル美術館
ではモナリザとミロのヴィーナスをしっかり見
た。昼食は筆者が普段利用している「ひぐま
らーめん」の親子丼。ホテルに帰って昼寝の
後、凱旋門を訪問、シャンゼリゼ通りのサロ
ン・ド・テで紅茶とケーキを楽しんだ。夕食は
なりゆきでブリュッセル料理(ムール貝とポテ
トフライ)となった。

 〔三日目・パリからオルレアンに移動〕レア
ルのサン・テュスタッシュ教会を拝観。予定
していたポンピドーセンタは開館時刻が十
一時だと言われて入るのを断念し、デパー
トの「プランタン」を覗きに行った。喫茶店で
休憩。そこから歩いてオペラ座まで行き中
を見学した。天井に至るまで豪華絢爛で
あった。昼食は近くのブラッスリーで魚料理。
ホテルに戻ってからATSという長距離タク
シー会社の車二台を連ねてロワール河沿
いに立つオルレアンのメルキュール・ホテル
に向かった。以後長距離の移動はすべて
このATSを利用した。

 〔四日目・オルレアン〕オルレアンの花公
園散策後和食レストランの「ひかり」でゆっく
りと和昼食を楽しんだ。しかし、ここで皆さん
をピストン輸送していた筆者の自家用車の
クラッチが故障するというハプニングが起こ
り、レッカー車を呼ぶ始末になった。皆さん
全員を徒歩で筆者のアパートにご案内して
第一回目の袋回しを実施。また、インター
ネットの実演も少しお見せした。夕食は筆者
の台所で関花子さんがおにぎりと味噌汁を
作って下さった。

 〔五日目・城廻り〕ロワール河の下流の城廻
りにでかけた。ジャンヌダルクがシャルル七
世に兵をもらいに行ったことで有名なシノン
城見学。要塞型の城で眺望は抜群だった。
近くのカフェで昼食、シノンワインを飲んだ。
次のユッセ城は眠れる森の美女のモデルと
なった城である。三つ目の城は女の闘いの
城として有名なシュノンソー城で、シェール
川を跨いだ回廊が独特の美観を作ってい
る。夕食は「ひかり」で寿司を食べた。

 〔六日目・フランス料理〕午前中は休憩。昼
食は、花公園に水源を持つロワレ川沿いの
フランス料理レストラン「リヴァージュ」に皆
さん正装して行き、ソムリエの付く食事を楽
しんだ。第二回目の袋回しはホテルにて
実施。今回の旅行に参加できなかった田
中幹雄氏と米田規子はEメールやFAXで
計二回の袋回しに参加した。

 〔七日目・ジアン方面観光〕ロワール河の
上流のブリアールの運河橋に行った。運河
橋を歩いて渡った先で羊飼いの老人と犬が
数十頭の羊に草を食べさせていた光景は
印象的だった。ジアンの国際狩猟博物館の
見学、カフェでの昼食、ジアン焼の店での
買物、陶器博物館の見学をしてオルレアン
に戻った。夕食はオルレアンのスペイン料
理レストラン「ドンキホーテ」のパエリア。

 〔八日目・帰国〕ゆっくりとチェックアウト。
オルレアンの中心地の気楽なレストランで
昼食中、付近で火事があり梯子車がきた。
江戸っ子の半沢つや子さんはもちろん見
物に出ていかれた。市内見物と買物の後、
駒志津子さんのご発案によりオルレアン
のサント・クロワ大聖堂を全員で拝観した。
ジャンヌダルクの物語がステンドグラスに
なっている。午後四時にホテルを出発、
パリの空港のJALのカウンタに皆さんが
荷物を預け終わったところでお別れした。
長いようであっという間に過ぎた八日間だった。
 合計二十二の題で行った袋回しの成果の
中から各参加者の代表句を一句だけ紹介する。
 おおい雲鈴懸の実のおわりごろ    聰
 青嵐百フラン札折りたたみ    志津子
 ビーナスの白い風吹き夏帽子    節子
 麦は穂に黄色い小さな郵便車  つや子
 時速百キロまだ青い麦畑      君子
 青あらし旅先で読むEメール     葉子
 はつなつの空港に立ちボンジュール 花子
 デザートの大きなお皿聖五月    幹雄
 万緑や恋人たちのカフェテラス    規子
 天然の大河の流れ夏つばめ      透


不安なギア     米田 透

夏の雨凱旋門に慰霊の灯
オペラ座の大きな鏡夏帽子
フランスの大河の流れ夏つばめ
樹と水と鳥の公園ポピー咲き
万緑や不安なギアで客運び
薔薇の花眠れる森の美女の城
タピスリーの猟犬と馬夏館
夏のシャトー廻りてのちの和食かな
ロワールの橋の半ばで驟雨来て
雲の峰ジャンヌダルクの像碧く


ゴッホの麦の秋 米田透(フランス) ---> 響焔賞応募、予選通過
                        
フランスに戻りゴッホの麦の秋
背の高いひまわり子との一週間
バカンスの日焼けを競うフランス人
高速道キャンピングカー追い越して
献香す夏の終わりの法母の忌
静かさや庭の団栗まだ青く
大輪のひまわり妻の精神力
子の声に明るさ少し秋立つ日
秋の夕日仕事がひとつうまく行き
睡眠と読書残暑の日曜日
飛び石連休秋なすの味噌炒め
秋の空敵も味方も無くなりて
七年の異国駐在虫の声
棒パンとブフブルギニヨン秋の宵
黒葡萄帰任まであと数か月



Haiku Indexに戻る。

ご意見をお願いします。