米田透 俳句集(2013年)

響焔2013年1月号(No.535)

青焔集

晩秋    (横浜)米田 透

台風に突っ込んで来て妻帰宅 (石井和子抄出)
珈琲豆のランクと鮮度秋の空
晩秋や四角い寺が落慶す
(沖みゆき抄出)
晩秋や枝太ければチェインソー
夕食に豆入りカレー秋深む


響焔2013年2月号(No.536)

青焔集

立冬    (横浜)米田 透

気の早い電飾聖樹日本国
何人かほかにも秋の花粉症
立冬のまぶしい朝日川堤
雨のあと落葉集まるところあり
世は平成主食としての薩摩芋


響焔2013年3月号(No.537)

青焔集

銀杏黄葉    (横浜)米田 透

豚しゃぶやあっという間に十二月
お土産の鰤鮨食べて師走かな
珈琲の豆を仕入れる冬至かな
銀杏落葉母校構内様変わり
キッチンを磨き天皇誕生日
(石井和子抄出)


響焔2013年4月号(No.538)

青焔集

冬野    (横浜)米田 透

門出れば道路凍結出勤す
聴き流す漢語教材冬深し
兄の墓を兄が案内雪の道
足首に重りを巻いて冬野行く
大寒や種類が増える子の料理


響焔2013年5月号(No.539)

青焔集

インド産珈琲    (横浜)米田 透

インド産珈琲豆や春近し
鶏鍋やたわいないこと話し合い
バレンタインデー忘れられてしまいそう
古代米入りの赤飯余寒かな
手作りの海鮮パスタ春めきて


響焔2013年6月号(No.540)

青焔集

ホワイトデー    (横浜)米田 透

雛祭フェイスブックに子の近況
おっとっと忘れるところホワイトデー
よく働き家族と食べる初鰹
(小林一子抄出)
エチオピア産の珈琲お中日
花盛り肉じゃが作り留守番す


響焔2013年7月号(No.541)

青焔集

春    (横浜)米田 透

春の雨広くて低い森の寺
新刊書山と積まれて四月ある日
春の宵星占いの話など
梅ワイン筍御飯卵焼き
(小林一子抄出)
うな重をきれいに食べてアメリカ人


響焔2013年8月号(No.542)

青焔集

若葉    (横浜)米田 透

湖畔の若葉富士山がくっきりと
(小林一子抄出)
鎌倉の懐石料理夏近し
夕食に卵焼き出てこどもの日
枝切れと言われて切って五月かな
がんばると約束すれど夏の風


響焔2013年9月号(No.543)

響焔の華(XI) <初秋>8句

目標     米田 透

これからの目標が見え秋初め
水澄むや捨てねばならぬこと多く
囲碁打つは対話のひとつ秋の朝
蝉の声残りの命どれほどか
カラマーゾフの兄弟新訳秋の星
天高し子は国境を越えて住み
食欲に負けては反省上り月
台風一過大空は如来なり

わたしは今年の九月で67歳となるが、
週四日は会社員として仕事を続 けてい
る。しかし、立場 上裏方に徹すること
にしているので、こ れから死ぬまでの
間に自分の力を傾注すべき対象は他に
ある と感じている。
幸い、長い間精進を続けてきた仏教
教団において、在家でありながら得度受
戒を得たのに加え、接心修行(座禅に
似た 瞑想行)において指導する立場に
あと 一段階と近づくことができた。こ
れか らは、一日も早くこの最後の段階
を超 え、真の意味でみ仏に仕える日々
を送ることができるようになることを
めざしたい。
こうして中心目標が定ま ればあとのこ
とは自ずと円滑に進んで 行く気がする。
家庭での食器洗い、職 場でのインド人
のケア、響焔へのIT関 係での貢献な
どもその一環として取り組める。

青焔集

梅雨の空    (横浜)米田 透

夏の夜伊豆多賀駅は閑散と
梅雨の空半蔵門から本郷へ
台風接近木々の鳥たち騒ぎおり
夏至の朝囲碁の後蕎麦兄八十
妻の留守料理に添える冷奴


響焔2013年10月号(No.544)

青焔集

こだわり    (横浜)米田 透

こだわりとアートの違い上野夏
(奈良岡晶子抄出)
徒歩退勤抹茶アイスに手が伸びて
夏の宵ハイテク生地のシャツを買う
血液を採られた後の夏の風
海の日や久々に食うハンバーガー


響焔2013年11月号(No.545)

青焔集

秋初め    (横浜)米田 透

当たらない豪雨の予報水羊羹
(奈良岡晶子、松塚大地抄出)
突然の歯痛七月何かある
若くしてまた一人逝き油照
茹で小豆と練乳あればかき氷
鰻重にスプーンがつく秋初め


響焔2013年12月号(No.546)

青焔集

初秋刀魚    (横浜)米田 透

ハングルの開発ドラマ秋めきて
爽やかや自転車に乗り投函す
免震のビルよく揺れて秋の雲
三枚の細長い皿初秋刀魚
(奈良岡晶子抄出)
秋彼岸法要の後ジャズを聞く
(松塚大地抄出)



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