米田透 俳句集(2004年)

響焔2004年1月号(No.427)

白焔集

金木犀    (横浜)米田 透

握り飯作ってもらう秋の朝
密教の一端に触れ金木犀
柿赤し妻の後行くウォーキング
家族居て甘さの足りぬ柿を食う
(大野忠孜抄出)
横浜の讃岐うどん屋そぞろ寒

白灯集

(横浜)米田 透

洒落た名の回転寿司屋宵の秋
十月や歓送会兼歓迎会
変貌の田町界隈秋気澄む
秋うらら韓国製の電子辞書
懸案の私事を処理する夜長かな


響焔2004年2月号(No.428)

白焔集

ハロウィン    (横浜)米田 透

ハロウィンの写真もついて子のメール
長き夜の韓国製のサスペンス
妻がいてピアノがあって冬の月
(半澤つや子、大野忠孜抄出)
短日や牛乳を買い帰宅する
流感にかからぬための注射受く
冬林檎今日は一日家にいて

白灯集

   (横浜)米田 透

木曜は韓国ドラマ梅擬
鋤焼のルール確認猫もいて
頼まれたものなど買って冬の道
腰のある食パンとジャム冬初
雨が降りボジョレヌーボー解禁日


響焔2004年3月号(No.429)

白焔集

時雨雲   (横浜)米田 透

俳人の短い祝辞時雨雲
(山崎聡抄出)
キリストの顔した男冬晴るる
忘年会アメリカ人が二人いて
(大野忠孜抄出)
電飾の家あちこちに十二月
シャンパンを三人で分け降誕祭

白灯集

   (横浜)米田 透

約束は約束冬の金曜日
もちこたえた古いパソコン十二月
年の暮蛍光ランプ全部替え
丸々と秋田生まれの冬林檎


響焔2004年4月号(No.430)

白焔集

冬木の芽   (横浜)米田 透

高層のビル数え日の同窓会
マーチングバンドに続き初荷行く
歩くことラジオ聴くこと寒の入り
冬木の芽並木の奥に何がある
尼寺の竹林暗く初御空

白灯集

   (横浜)米田 透

門灯は四ワットなり年用意
密教の寺の静寂二日かな
カレーなど家族に作り三日かな
週末へうれしいような雪予報
大寒や医師の前では元気良く


響焔2004年5月号(No.431)

特別作品

不思議な力   (横浜)米田 透

七草粥セントルイスに子が一人
黒猫を暗闇に出し冬北斗
寝ていたい気持断ち切り寒い朝
初雪や不思議な力湧いて来て
淡々と日課をこなし寒の雨
見えぬ手に背中を押され霜だたみ
朝寝坊猫に起こされ寒修行
手袋借り朝の修行の最終日
美しき冬が広がる午前五時
道を掃き心を清め寒の朝
冬の雲同期の友の手術の日
ネパールの話など聴き寒の寺
寒暁に自転車を漕ぎ奉仕行
鬼打豆身近な人の幸祈る
立春や生きていることありがたく

白焔集

立春   (横浜)米田 透

手作りの春巻ジュワリ寒の内
横浜みなとみらい線春立ちぬ
週末の工場五階暮遅し
飯を炊き一汁一菜寒明ける
赤と黄の花束妻の誕生日

白灯集

   (横浜)米田 透

涙出る韓国ドラマ浅き春
春の朝ニューヨークから生中継
内科医に腕出し二月無事に済む
花粉症の兆しひたすら眠りけり


響焔2004年6月号(No.432)

白焔集

春疾風   (横浜)米田 透

紅梅と白梅いつも通う道
根性の無い人間に春の雪
職場ごとさらわれそうな春疾風
北上する桜前線よく眠り
ささやかな夫婦の会話チューリップ
(磯辺すみ子抄出)

白灯集

   (横浜)米田 透

ナイフ付きバター入れ買い春の風
変わったもの変わらないもの風光る
フランスパンと中国映画朧月
花粉症患者同士の会話かな
遠回りして帰りかすかな春の雨


響焔2004年7月号(No.433)

白焔集

紅つつじ  (横浜)米田 透

みほとけは身近におわし桃の花
韓国語ときどきわかり春の雨く
若い二人の国際結婚復活祭
人は皆ゆっくり歩き紅つつじ
腰掛けて日本の春の声を聴く

白灯集

   (横浜)米田 透

子のためにステーキを焼き春の宵
なすべきをなして丸つけ白椿
暖かや病気無いとは言えないが
アラビアの文字の成り立ち暑い春


響焔2004年8月号(No.434)

白焔集

みどりの日  (横浜)米田 透

すれ違うバスに日の丸みどりの日
温泉と筍みんな年取って
(磯辺すみ子抄出)
麦の秋三十三回婚記念
米国製武士道映画立葵
退職の後輩元気針槐

白灯集

   (横浜)米田 透

足腰に心地よい張り春の夢
平日を自宅で過ごし柏餅
まごころの尊き赤や白の花
薔薇と芍薬体脂肪率少し減る
字幕付き韓国ドラマ虞美人草


響焔2004年9月号(No.435)

白焔集

夏柳  (横浜)米田 透

夏柳連作らしき息子の絵
(磯辺すみ子抄出)
紫陽花と短いお経猫の通夜
(和田璋子抄出)
兄三人弟一人アマリリス
父の日の革命的な減量本
(山崎聡抄出)
新鮮なトマトと胡瓜妻の声

白灯集

   (横浜)米田 透

老人のように眠りて朴の花
ぼおっとして雨の日曜ジギタリス
ブルゴーニュワインとケーキ山躑躅
のんびりと夏のおやじのポークカレー
好きなだけ眠って起きて夏の雨


響焔2004年10月号(No.436)

白焔集

土用鰻  (横浜)米田 透

疲れれば眠るほかなし時計草
夏満月こちらの心映しけり
悪者になった気がするサングラス
夕立の後の青空投票す
土用鰻食うことのほか何もせず

白灯集

   (横浜)米田 透

無駄な物売る店は無く金亀虫
土曜日のドライブコース姫女苑
自家製のスープストック熱帯夜
暑さ一服潔く休養す
韓国製泣かせるドラマ明易し


響焔2004年11月号(No.437)

白焔集

真実  (横浜)米田 透

ヘアカットオンリーの店夏の雲
夏の月パン工房付きレストラン
暑い日の辛口カレー猫の足
みんみん蝉階段上りまた下り
真実は喜劇の中に日日草

白灯集

   (横浜)米田 透

参加者は年下ばかり暑気払い
このところ語学三昧矢車草
ゆるみくる心と身体今朝の秋
ぜいたくな時間に浸りゼラニウム
夏真昼アメリカ人と食べに出て


響焔2004年12月号(No.438)

白焔集

秋の薔薇  (横浜)米田 透

赤ん坊が主役会社の納涼祭
つながらぬ昔の記憶弁慶草
金曜のアフターファイブ秋の雨
じわじわと血圧高く秋半ば
秋の薔薇まだこれからの五十八

白灯集

   (横浜)米田 透

留学の子には悪いが秋刀魚食う
本物の地震が少し震災忌
内科医に元気だと言い千日草
日課など忘れて秋の三連休



Haiku Indexへ戻る


ご意見をお聞かせ下さい